人事異動
電気工学専攻・大野(哲)研究室では、簡便な計測に基づく新しいトモグラフィ手法を開発しました。
未来のエネルギー源として期待される核融合発電に関する研究として、トモグラフィと統計的手法を組み合わせた新しい計測解析手法を開発し、装置壁への熱負荷低減時に増幅して現れるプラズマ輸送現象の4次元的な時空間挙動を明らかにしました。
電子工学専攻・牧原研究室では、Si系量子ドット精密制御により、少数電子・光子を用いた知能情報処理デバイスへの応用に取り組んでいます。
牧原研では、その半導体技術、特にシリコンナノテクノロジーの更なる高度化に貢献するために、材料科学からプロセスインテグレーション・デバイス化技術にわたる横断的な研究を推進しています。特に、SiH4およびGeH4ガスのLPCVDによるSi系量子ドットの自己組織化形成において、ドットのサイズ、密度、配列制御技術を開発するとともに、新たな機能デバイス開発に取り組んでいます。
電気工学専攻・加藤(丈)研究室では、再生可能エネルギーの余剰電力を活用した電気自動車の充電促進のためのモデルを構築しています。
再生可能エネルギー大量導入時の余剰電力を活用して電気自動車に充電すれば、CO2を出さずに車で移動できます。その実現にはどんな仕組みが必要かを検討するための基礎データとして、我々は様々な将来シナリオに応じた電気自動車の充電需要を計算するモデルを構築しています[1]。その結果は将来の配電系統における電力需給解析にも活用されています[2]。
[1] 渡邉雅俊, 占部千由, 加藤丈佳, 中村俊之, 山本俊行, 星野優子, 小西充峻:「再エネ電力によるEV充電増加のための日積算日射量に応じた充電促進時間帯の導入効果」, 電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌), 144巻, 6号, p.364-375, 2024年6月
[2] 中部圏社会経済研究所:報告書「中部地域の自治体における地産地消のエネルギーシステム導入効果に関する調査研究」, 2024年4月
人事異動
情報・通信工学専攻 山里研究室では,世界初かつ唯一,光の軌跡を用いて,少量の光源でイメージセンサ通信における空間的に大容量・高自由度の並列送信を実現しました.
イメージセンサはカメラの感光デバイスであり,異なる光源を個別に検知し,一枚の画像として出力します.イメージセンサは大量の光信号を一斉に受信できますが,送信側には多数の光源や広い設置面積が必要です.大量の光源を高速かつ高精度に制御するため,送信機の設計難易度が高まり,製造コストも増大します.また,固定光源を使用すると,光源の密度と信号の伝送方向が制限されます.我々は移動する光源を基に,世界初かつ唯一の光の軌跡を利用した並列伝送方式を提案しました.提案方式は少ない光源数と設置面積で大容量・高自由度の並列送信を実現し,多方向への情報伝送も可能にしました.この成果は,光無線分野のトップジャーナルであるIEEE Photonics Journal誌とOptics Communications誌に掲載されました[1][2].
[1] Z. Tang, J. Zheng, T. Yamazato and S. Arai, "Image Sensor Communication via Light Trail Using Propeller LED Transmitter," in IEEE Photonics Journal, vol. 15, no. 5, pp. 1-12, Oct. 2023, Art no. 7304412, doi: 10.1109/JPHOT.2023.3317082.
[2] Z. Tang, T. Yamazato, "Image sensor communication and its transmitting devices," in Optics Communications, vol. 541, 2023, 129545, ISSN 0030-4018, doi: 10.1016/j.optcom.2023.129545.
電子工学専攻・内山研究グループでは、超高感度小型磁気センサを開発することで、医療診断や自動運転システムへの磁気センサ応用を目指した研究を行っています。
アモルファス磁性ワイヤを利用した超高感度小型磁気センサの開発により、心臓や脳の電気活動に伴う生体磁場を日常的に計測し、医療診断に応用するための研究を行っています。また、自動運転への応用を目的とした車両通行計測システムの開発研究を行っています。
情報・通信工学専攻 教員公募
名古屋大学大学院工学研究科情報・通信工学専攻では教員(教授1名)を公募しています。
(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
情報・通信工学専攻・岡田研究グループでは,山間地におけるドローン自営無線通信システムに取り組んでいます。
岡田研究グループでは,山間地においてドローンを用いた自営無線通信システムの実現性を検証しました.基地局とドローンの間で安定した通信路を確保するため,山間地の地形を考慮した中継機の設置方法を考案したり山間地における電波伝搬特性を実測により明らかにしました.
電子工学専攻・高橋研究室では、新しい顕微鏡技術を開発することで、これまで誰も可視化したことのない細胞や材料の機能を明らかにしています。
高橋研究室では、新しい顕微鏡技術を開発することで、これまでわからなかった細胞や材料の機能をナノスケールで可視化する研究を行っています。その一例として、ウィルスの取り込まれるプロセスを直接可視化し、理解することは、薬剤開発につながる知見を得ることができます。また、触媒や蓄電材料についても効率的に目的の反応を効率的に生じさせることが可能な構造を理解するために、構造と反応性の関係を結び付ける必要があり、新しい顕微鏡技術の開発が不可欠です。
人事異動
低温プラズマ科学研究センター教員公募
名古屋大学低温プラズマ科学研究センター(工学部電気電子情報工学科および工学研究科電子工学専攻兼担)では教員(助教1名)を公募しております。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
電気工学専攻・早川研究室では,地球温暖化ガス削減に向けた真空電力機器の高電圧化技術を開発しています。
高電圧電力機器における地球温暖化ガス削減のため,真空遮断器で電流遮断機能を担う真空インタラプタの高電圧化が期待されています。産業的に用いられている電極間への電圧印加による放電で絶縁上の弱点を除去する手法(コンディショニング)において経験的に決められていた電圧印加条件について,対向電極材料の溶融・付着メカニズムの観点から放電電荷量で最適化できることを見出しました。本研究成果は,2023年12月発行の「IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation」誌に掲載されました。
岩田(哲)研究室では、共通鍵暗号技術に対する量子攻撃の開発に取り組んでいます。
岩田(哲)研究室では、共通鍵暗号技術に対して、量子アルゴリズムを用いた量子攻撃の開発に取り組んでいます。左図はブロック暗号の代表的な構造の一つであるFeistel構造です。4回繰り返しのFeistel構造は、量子選択暗号文攻撃という攻撃を考えると、中図のような周期を持つ関数と見なすことができ、周期発見量子アルゴリズムを用いることで効率的な攻撃が可能であることを示しました。右図はSum of Even-Mansour方式という擬似ランダム関数です。古典的な攻撃に対しては数学的な安全性証明が知られていますが、量子攻撃により効率的に攻撃可能であることを示しました。
このような攻撃手法の開発は、量子攻撃に対して安全な共通鍵暗号技術の設計に役立てられます。
人事異動
田中研究室ではプラズマ活性溶液によるがん治療、再生医療、農水産業応用研究をなど進めています。
電子工学専攻の田中研究室では、プラズマ照射した溶液(プラズマ活性溶液)による抗腫瘍効果を見出し、医学部や農学部と共同で、作用機序の解明、安全性・有効性の検証、実用化(臨床応用)に向けた研究を行っております。
情報通信工学専攻 長谷川・森研究室では、マルチバンド伝送に対応する光クロスコネクトノードの実証実験を行い、2000kmを超える伝送に成功しました。
光ファイバ通信において、従来用いられているC帯と呼ばれる周波数帯を使用した伝送では容量が限界に達しつつあることから、L帯やS帯を追加的に用いるマルチバンド通信が注目され盛んに研究されています。しかし通信装置(光クロスコネクトノード)では異なる周波数帯向けのデバイスをそれぞれ用意する必要があり、構造が複雑になりその実現が難しくなります。そこで、光信号を帯域毎にグループ化して統合し、経路を制御する新たな装置構成を考案し、プロトタイプを開発して伝送実験を行いました。このプロトタイプは16入力16出力の規模を持ち、実証した総スループットは300Tbpsを超えます。異なる周波数帯域に分布した光信号を、それぞれ2000+km以上伝送できることを確認しました。この結果は毎年北米で開催される最高峰の国際会議OFC (Optical Fiber Communication Conference) にて発表されました。
人事異動
低温プラズマ科学研究センター 教員公募
名古屋大学低温プラズマ科学研究センター(工学部電気電子情報工学科および工学研究科電子工学専攻兼担)では教員(准教授1名)を公募しております。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
液中プラズマによる3次元複雑形状表面へのナノグラフェン複合材料に関する研究
電子工学専攻・石川研究室(プラズマナノプロセス科学グループ)のデラ・ベガ・シャンレーン・デラ・クルズ(博士学生)及び堤隆嘉講師,堀勝教授らは,エタノール液の気液界面に高密度プラズマを発生させることで,液中に浸漬した3次元複雑形状(3D構造)をもつスポンジ状ニッケルの全面にナノグラフェンを堆積する新たな手法を開発しました。今回の研究成果によって,機能性をもつ3次元構造体を崩さずに,その3D構造金属材料の表面に良質のグラフェン材料を大気圧下,室温で堆積できる新たな低温プラズマプロセスの開発に成功しています。
高周波電波の究極的低損失伝送回路を実現 ~超伝導体でBeyond 5G/6G通信システム実現に寄与~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学宇宙地球環境研究所の中島 拓 助教、鈴木 和司 技術補佐員(研究支援推進員)、自然科学研究機構国立天文台、株式会社川島製作所、及び国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、共同で、超伝導金属であるニオブを材料に用いたミリ波電波用の導波管を開発し、超伝導状態にある導波管の伝送損失が他の一般的な金属材料の導波管に比べて、桁違いに小さいことを発見しました。
超伝導体を材料とする電波の伝送路は、同軸ケーブルや平面ストリップ線路などでは実用化されていますが、これらは比較的周波数の低い電波の伝送に限られています。次世代の通信規格であるBeyond 5G/6Gで利用が見込まれる100 GHzを超えるようなミリ波・サブミリ波・テラヘルツ波帯では、導波管と呼ばれる金属管による立体伝送路が使われますが、「超伝導導波管」の研究はこれまでほとんど行われていませんでした。理論的な先行研究では、超伝導による効果が逆に伝送損失を大きくしてしまい、実用的なものにはならないという予想もありましたが、本研究において実際に超伝導導波管を製作して伝送損失を測定した結果は、その予想を大きく覆すものでした。
本研究の成果を応用すると、既に導波管回路が利用されている宇宙観測用の電波望遠鏡や地球大気の環境計測装置などで、これまでにない超高感度な受信システムが実現できます。さらに、100 GHzを超える周波数帯を用いるBeyond 5G/6G通信システムでも導波管が使用される可能性が高く、高効率な高周波情報通信の実現が期待されます。
本研究成果は、2023年8月8日付Journal of Physics誌「Conference Series Volume 2545」に掲載されました。
名古屋大学オープンキャンパス
8月7日(月)に開催された名古屋大学オープンキャンパスにおいて,工学部電気電子情報工学科は,学科紹介・模擬講義・研究室見学を実施し,全国各地から高校生やその保護者など200名以上にご参加いただきました.ありがとうございました.見学できなかった研究室の様子など,ここに掲載していますので,ご覧ください.
人事異動
横水研究室では、DC限流ヒューズによる高遮断性能を実現するアーク消弧材に関する研究を進めています。
電気工学専攻の横水研究室では,電気自動車用の限流ヒューズにおけるDC遮断性能の向上方法の提案とそのメカニズム解明に関する研究を実施しています。その一環として,アーク消弧媒体SiO2粉末に加えて,silicone(C2H6SiO)材を銅エレメント周囲に追加配列することによって,SiO2単独の場合よりも,DC遮断プロセスに形成される過渡アークの電気抵抗を約2倍に上昇でき,その結果,DC1000 Aの限流遮断に要する時間を20–40%短縮できることを明らかにしました。さらに,この現象メカニズムを高温SiO2/C2H6SiO分解蒸気の輸送特性から解き明かしました。本研究は自動車ヒューズ製造会社との共同研究として行ってきたものです。本研究成果は,2023年8月29日付で「Journal of Physics D: Applied Physics」誌に掲載されました。また,量子化学計算を併用した高温ガスの物性解析にも取り組んでおり,成果の一部がこちらに掲載されています。昨年度からは,未来材料・システム研究所 エネルギーシステム(中部電力)寄附研究部門 岩田(幹)研究室との共同研究として進めています。
生細胞の表面構造をナノスケールで直接可視化 ~エクソソームなど細胞間コミュニケーションの理解に貢献~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科/金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の高橋康史教授,WPI-NanoLSIの華山力成教授,福間剛士教授,および海外主任研究者(PI)で英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのユリ・コルチェフ教授らの共同研究グループは,生細胞表面の構造をナノスケールのレベルで可視化する技術を確立し,細胞外物質の取り込み過程や,細胞間コミュニケーションに関与するエクソソームの可視化に成功しました。
ウィルスの細胞内への侵入や,細胞内外との物質のやり取りを観察するためには,現状の顕微鏡技術の空間分解能では不十分です。そのため,超解像度顕微鏡など高分解能化が進められていますが,依然として空間分解能に課題を抱えています。細胞を生きたまま直接可視化するライブセルイメージングは,細胞のダイナミックな動きを理解することのできる方法です。走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)は,細胞のナノ構造を侵襲することなく生きた状態でライブイメージングを行うことができます。しかしながら,SICMの解像度向上に不可欠なガラスナノピペットの微細化が困難なため,これまではその高度な技術を持つ限られた研究グループのみが超解像度のイメージングを達成してきました。本研究では,このような細胞表面のナノスケールの構造変化を再現性良く観察するため,キーとなる微細なガラスナノピペットの作製法を確立しました。さらに,高解像度SICMにより,細胞外の物質を取り込む過程の1つであるエンドサイトーシスを連続的に可視化することや,細胞外へ放出されるエクソソームの動きを捉えることに成功しました。
本研究成果は,2023年8月20日付(米国東部時間)でアメリカ化学雑誌「Analytical Chemistry」のオンライン版に掲載されました。
情報・通信工学専攻・藤井研究室では位相回復に基づくホログラフィの研究を行っています。
ホログラフィは三次元物体からの光の波面情報を再生するディスプレイ技術です。波面の振幅と位相が既知であれば、三次元物体を空間中に再生することが可能です。しかし、波面の記録時に位相の情報は失われてしまいます。藤井研究室では、波面の振幅から位相を復元する位相回復に基づくホログラフィ技術を研究しています。
左:光学装置、中央:既存手法の再生像、右:提案手法の再生像
塩川和夫教授がSCOSTEP会長に再任されました。
2023年7月14日にドイツのベルリンで開催されたSCOSTEP(Scientific Committee on Solar-Terrestrial Physics、太陽地球系物理学科学委員会)の総会で、塩川和夫教授(電気工学専攻)が、SCOSTEPのPresidentに再任されました。任期はこれまでの4年間に加えて、2023年7月-2027年7月の4年間です。副会長はSpainのBernd Funke博士です。SCOSTEPは国際学術会議(International Science Council)傘下の国際組織で、日本学術会議を含めて34か国・地域の学術会議や宇宙機関がメンバーとして出資しており、登録されている研究者は70か国以上、約2600人です。SCOSTEPはSTEP(1990-1994),CAWSES-I,-II(1990-1994),VarSITI(2014-2018),PRESTO(2020-2024)など、太陽地球系科学に関する国際共同プログラムを提案・推進するとともに、大学院生のスカラーシップや国際スクールなどの人材育成を行っています。また、国連宇宙平和利用委員会の恒久オブザーバーです。
二酸化炭素の還元触媒について、構造と電気化学特性の関係をナノスケールで解明 ~副反応を抑えた二酸化炭素還元のための触媒開発に貢献~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の河邉 佑典 博士課程後期学生、同大学院工学研究科/国立大学法人金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の高橋 康史 教授らの研究グループは、筑波大学の伊藤 良一 准教授、堀 優太 助教との共同研究で、触媒表面で生じる二酸化炭素還元反応を、電気化学的にイメージングする技術を確立し、水素ガスなどの副生成物を抑え、化成品を効率的に生成する電解合成触媒の反応メカニズムの理解に成功しました。
再生可能エネルギーを活用した電気化学的な二酸化炭素の還元は、二酸化炭素を資源として化成品を電解合成できる有力なカーボンニュートラル技術の一つです。その一方で、化成品を電解合成できる触媒では、水素ガスなどの副生成物が生じてしまうという課題を抱えています。本研究は、効率的な化成品の電解合成に向けて、副生成物を抑えられる電解合成触媒の特徴の理解を目指しました。走査型電気化学セル顕微鏡(SECCM)を用いて触媒の幾何学構造と電気化学データを同時マッピング計測することで、幾何学構造と電気化学データが一対一で対応付けを実現させました。さらに、第一原理計算により触媒活性サイトにおける反応メカニズムをシミュレーションすることで、二酸化炭素の還元に必要な特徴を明らかにしました。
本研究成果は、2023年6月5日付アメリカ化学雑誌「ACS Nano」に掲載されました。
充放電中のイオンの濃度プロファイルを形状変化とともにナノスケールで可視化 ~デバイス材料の開発・オペレーション条件の最適化に貢献~
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科/国立大学法人金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の高橋 康史 教授らの研究グループは、株式会社日立製作所の高松 大郊 主任研究員、金沢大学NanoLSIの福間 剛士 教授、NanoLSIの海外PIでインペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス)のユリ コルチェフ教授との共同研究で、リチウムイオン電池を駆動した際に、正極や負極の表面に生じる、イオンの濃度プロファイルの変化をナノスケールで捉える技術を開発しました。
本研究では、先端に半径50 nmの開口を有するガラスナノピペットを用いて、充放電中のイオン濃度の変化を、イオン電流の変化として局所的に計測する技術を開発しました。この手法は、ガラスナノピペットを特定の点において、その点の応答を捉えるだけでなく、走査型プローブ顕微鏡の位置制御技術を活用することで、3次元的なイオンの濃度プロファイルを、蓄電材料を駆動させた状態で評価することができます。実際に、リチウムイオン電池の負極に利用されるグラファイトについて、電位をスイープした際に生じるイオンの濃度変化を可視化することに成功しました。さらに、グラファイトの相転移に伴うナノスケールの体積変化を同時に捉えることに成功しました。この技術は、リチウムイオン電池のオペレーションや、セパレータや電池の構造の最適化に貢献できるだけでなく、腐食や触媒の評価にも活用することが期待できます。
本研究成果は、2023年2月27日付アメリカ化学雑誌「JACS Au」に掲載されました。
電気工学専攻・福塚研究室(電気エネルギー貯蔵工学研究グループ)では全固体リチウム二次電池の界面反応の解析を行っています。
電気自動車の本格的実用化に向けて全固体リチウム二次電池が期待されています。当研究室では黒鉛負極/固体電解質界面に注目して、モデル化により界面反応の活性化障壁が従来の液体電解質を用いたリチウムイオン電池と比べて低いことを明らかにしました。
人事異動
人事異動
堀 勝 教授(電子工学専攻)(低温プラズマ科学研究センター長)が、令和4年秋(11月3日)の紫綬褒章を受章しました。
低温プラズマ科学の分野において、プラズマの計測方法を確立し、これまで未知であったプラズマプロセス中のラジカルと固体との相互反応機構を定量的に解明し、新しいプラズマの制御方法を世界に先駆け実現した。
また、これらの成果により開発した高密度大気圧低温プラズマ装置を医療・農業の分野に展開し、新たな学際領域を開拓するなど、斯学の発展に多大な貢献をした。
エッチング表面に入射する高エネルギー粒子の入射角度分布の精密測定に成功しました
電子工学専攻の豊田研究室では、半導体加工において重要なエッチングプラズマの解析を進めています.フラッシュメモリなどの製造では穴の径に対して数10倍以上にもなる深い穴を形成する加工をおこないますが,その際には基板面に対してきわめて高い精度でイオンを垂直に入射しなければなりません.しかしながらこれまでは入射イオンの垂直性がどの程度の誤差で実現できているかを実際の装置で評価した例はありませんでした.我々は基板を設置する電極に入射するイオン角度分布を計測する特殊な計測装置を独自に開発し,実際のエッチングと同じ条件で入射イオンのビーム拡がりを2次元画像で測定することにより,入射イオンの拡がり角度を0.1°以下の高精度で計測することに成功するとともに,イオンだけでなく高速の中性粒子の入射角度の拡がりを測定することに世界で初めて成功しました. この研究成果は,今後のメモリー高密度化に向けたプラズマ制御の指針を得るための重要な情報を提供するもので,メモリー製造技術の高度化への応用が期待できます.
イオンおよび中性粒子ビームのイメージング測定例
エッチングプラズマ源におけるイオンおよび中性粒子ビームの角度分布測定
電子工学専攻・須田研究室では窒化ガリウム縦型パワーデバイスの要素技術としてイオン注入によるp型GaN形成の研究に取り組んでいます。
グリーン社会実現に向けて、電力変換に用いられるパワー半導体デバイスの性能向上を目指して研究を行っています。ワイドギャップ半導体である窒化ガリウム(GaN)は、エネルギー損失を劇的に低減できる次世代パワーデバイス用材料として期待されています。パワーデバイスを作製するのに必要な技術の一つにイオン注入による局所ドーピング技術がありますが、イオン注入によってp型GaNを形成することは、長年の課題でした。須田研究室では、イオン注入後の高温熱処理を超高圧で行うことでp型を形成する技術の開発に成功し、また最近では、超高圧でありながら実用が視野に入る温度1300°C、圧力300 MPaの熱処理で形成可能であることを見出しました。本成果は、窒化物半導体国際ワークショップ(IWN2022, 2022年10月ベルリン開催)にて発表しました。
(a) 縦型パワーデバイスにおける局所p型ドーピングの例。(b) イオン注入と高温超高圧熱処理によるp型GaN形成プロセス。(c) ホール効果によって測定した、形成したGaNの正孔密度と移動度の温度依存性。温度1300°C、圧力300 MPa、60分の熱処理により、エピタキシャル成長と同等のp型GaNを実現。(Appl. Phys. Express 14, 121004 (2021))
人事異動
電子工学専攻・大野(雄)研究室では摩擦帯電を用いたエネルギーハーベスティング技術の研究を進めています。
大野(雄)研究室では、優れた機械的特性と電気伝導性を併せ持つカーボンナノチューブを用いて、人と調和する柔軟なウェアラブルデバイスの研究開発を行なっています。このようなウェアラブルデバイスを駆動する電源として、環境に存在する微小なエネルギーから発電するエネルギーハーベスティング技術が期待されています。本研究では、摩擦帯電を用いたエネルギーハーベスティング技術に着目し、人の動作や運動から発電することが可能な柔らかい摩擦帯電型発電シートを開発しました。
作製した発電シート(a)とその出力電圧(b)
間欠動作回路(c)を用いて拍手により腕時計を駆動させた様子(d,e)
情報・通信工学専攻・河口研究室では実空間と仮想空間を接続する新たなディスプレイロボットの研究開発を進めています。
バーチャルリアリティに代表される仮想情報空間が広がりを見せるなか、物理空間や他の仮想空間を接続・融合するための新たなコミュニケーション手段が求められています。
河口研究室では球体ディスプレイ、360度カメラ、AMR(Autonomous Mobile Robot)、IoTアクチュエータなどを組み合わせた新たなモバイルロボットMetaPoを開発し、任意の空間同士を複数のコミュニケーションのモダリティによって接続する手法の研究開発を行っています。その最初の成果として、8月にバンクーバーで開催された国際会議ACM SIGGRAPHで発表を行いました。
開発したモバイルディスプレイロボットMetaPoおよびそれを利用したコミュニケーションの様子
人事異動
電子工学専攻・五十嵐研究室(未来材料・システム研究所協力講座)では次世代エネルギーデバイス実現のための物性研究を進めています。
持続可能社会の実現のため、高速・高効率かつ超低消費電力の次世代エネルギーデバイス材料の研究が求められています。このような半導体デバイスの作製には、半導体結晶への異種原子の導入と分布制御(ドーピング)が不可欠です。名古屋大学の最先端分析機器を利用し、異種原子の分布や、結晶原子配列の乱れ(欠陥)などを原子分解能で計測・制御する技術を開発し、半導体物性制御の研究を進めています。
窒化ガリウム(GaN)結晶の欠陥と異種原子(Mg)分布の観察例
情報・通信工学専攻 教員公募
名古屋大学大学院工学研究科情報・通信工学専攻では教員(教授1名)を公募しています。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
低温プラズマ科学研究センター 教員公募
名古屋大学低温プラズマ科学研究センター(工学部電気電子情報工学科および工学研究科電子工学専攻兼担)では教員(教授1名)を公募しております。(学内向け情報にも掲載しております。)
ご応募をお待ちしております。
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研究分野