研究内容

細胞の研究

細胞の表面は絶え間なく動いています。その中でも、ウィルスなど光学顕微鏡では捉えられないナノスケールの物質の取り込みを直接可視化する技術は、とても重要であり、世界中の研究者がこの開発を行っています。私たちは、非常に細いガラス管を利用したユニークな走査型プローブ顕微鏡(走査型イオンコンダクタンス顕微鏡:SICM)を開発しています。下記の動画は、光の限界を超えた解像度で細胞表面のごく一部を拡大して可視化したものです。物質の取り込みの様子を見ることができました。イメージのスケール(2.5 ×2.5 um)は、髪の毛1本の約1/50です。黒い部分がへこんでいる部分ですが、ダイナミックに構造変化が起こっているのがわかります。現在、この変化がどのようなメカニズムで生じているかを明らかにすることを目標としています。


かすかな細胞の応答を捉えるバイオセンサ―
単一細胞が消費・放出する化学物質をその場で計測するには、非常に高感度に化学物質をセンシングするセンサーが必要です。我々は、電気化学をベースとしたバイオセンサーの開発を15年間続けており、微小電極を中心とした新しいバイオセンサーや走査型電気化学顕微鏡(SECM)の開発を進めています。また、ナノピペットを用いた細胞の局所刺激や、細胞質の回収も行っています。下記は、蛍光物質をナノピペットから直接一つのがん細胞内に導入している様子です。電圧を印可するだけで、簡単に試薬を細胞内に入れることができます。

 

材料の研究

触媒材料の構造と触媒活性は密接な関りがあります。しかし、これまでこの構造と触媒活性の関係を可視化することは困難でした。この不均一性を可視化することは、高機能化のための材料設計指針を提示につながります。そこで、高橋は2012年から電気化学セル顕微鏡(SECCM)の独自開発をはじめ、触媒活性をナノスケールで捉えることに成功しました。 この技術は、蓄電材料や材料の腐食を評価することもできます。下記のイメージは、水素発生のための触媒として注目されているMoS2の水素発生の起こりやすさを電気化学的にイメージングしたものです。MoS2のエッジとテラス部分での反応性の違いを明確に可視化することができました。現在は、水素や酸素以外の生成過程の評価も検討しています。